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BtoBのファネル設計:受注目標から商談・リード・予算を逆算する方法【ワークシート付き】

公開日 読了目安 12分

齊藤 秀
齊藤 秀

SityCanvas株式会社 営業支援事業部 責任者

BtoBのファネル設計:受注目標から商談・リード・予算を逆算する方法

この記事の結論

  • ファネル設計とは、受注までの段階ごとに「数・転換率・時期・使ってよいお金」を決め、どこに手を打つかをはっきりさせることです。
  • 逆算するときは、解約で減る分を足し、チャネルごとに分け、リードが入った月ごとに追うと、計画と実績のずれが小さくなります。
  • 最後に、1件の受注で得る粗利から商談・リード1件に払える上限を出すと、広告・外注・採用のどこにお金を使うべきかを判断できます。

ファネル設計とは

ファネル設計とは、見込み客が受注に至るまでの段階を分け、段階ごとの「数」と「次の段階に進む割合(転換率)」を決めることです。BtoBでは「リード → MQL → SQL → 商談 → 受注」と段階を分け、売上を「リード数 × 各段階の転換率 × 受注単価」の掛け算で考えます。どの段階の数字を動かせば目標に届くかを、感覚ではなく計算で話せるようになります。

段階意味判断する人
リード資料請求・問い合わせ・名刺交換などで、連絡先がわかった見込み客マーケティング
MQL狙う企業の条件に合い、関心が高いとマーケティングが判断したリードマーケティング
SQL課題・時期・予算などを確認し、営業が対応すべきと判断したリードインサイドセールス
商談提案の場を持ち、受注の見込みとして管理し始めた状態フィールドセールス
受注契約に至った状態フィールドセールス

大事なのは、段階の名前よりも「誰が、どの条件で次に進めるか」を営業とマーケでそろえることです。定義がずれたまま数えると、同じ「商談」でも部署ごとに数字が変わり、逆算が成り立ちません。

なぜ受注目標から逆算するのか

逆算すると、何を・いつまでに・どれだけやればよいかが決まり、限られた人とお金の使い道に優先順位をつけられるからです。特にスタートアップやSaaSでは、採用・広告・外注のどこに投資するかを、数字で説明する場面が多くあります。

もうひとつの理由は、BtoBの買い手の動き方です。ワンマーケティング社の2025年の調査では、購買担当者の85%が、営業担当者と会う前に購入先の候補を絞り込んでいました(「ほぼ決まっている」29%、「いくつかの候補に絞り込まれている」56%)。また、ITコミュニケーションズ社とB2Bマーケティング社の共同調査では、比較する会社を「3つ以内」に絞る人が81.4%と、2022年の68.1%から増えています。

営業が会う前の段階で、候補に入れてもらえるかがほぼ決まっています。商談の数だけを見るのではなく、その手前のリードや認知の段階から数字で設計しておく必要があります。

リード獲得チャネルの全体像と、分け方

逆算の精度は、チャネル(リードを獲得する経路)をどう分けて見るかで決まります。チャネルによって、相手の検討度合い・商談になりやすさ・量の伸ばしやすさ・成果が出るまでの速さがまったく違うからです。まずBtoBの主なチャネルを、4つの大分類で整理します。

インバウンド:相手から来るチャネル

チャネル検討度合い商談化拡大しやすさ立ち上がり
SEO・オウンドメディア中〜高中中遅い
リスティング広告高中〜高高速い
SNS・ディスプレイ広告低〜中低高速い
ホワイトペーパー低〜中低〜中中中
自社ウェビナー中中中中
比較・レビューサイト中〜高中高速い
プレスリリース・PR低低低読みにくい

アウトバウンド:こちらから当たるチャネル

チャネル検討度合い商談化拡大しやすさ立ち上がり
電話(テレアポ)低絞り込み次第高速い
メール・問い合わせフォーム低低高速い
手紙・DM低低〜中中中
SNSでの直接連絡低低〜中低〜中中
ABM企業ごと高低遅い

イベント/パートナー・紹介

チャネル検討度合い商談化拡大しやすさ立ち上がり
展示会中中中中
共催セミナー中中中中
カンファレンス登壇中低〜中低遅い
顧客・知人からの紹介高高低読みにくい
販売代理店・業務提携中〜高中〜高中遅い
  • SEO:キーワードによって相手の検討度合いが大きく変わり、成果が出るまで数か月かかる。
  • リスティング広告:今まさに探している層に届くが、量は予算に比例する。
  • 比較サイト:比較検討中の人が多い一方、複数社に同時に資料請求されやすい。
  • 電話:相手の検討度合いは低いが、狙う企業を絞り込めば商談化率を上げられる。量は人員で決まる。
  • 手紙・DM:メールより役職者に届きやすい。
  • ABM:狙う企業を決めて、広告・電話・手紙などを組み合わせて多面的に当たる。対象の数は限られる。
  • 紹介:商談になりやすいが、自社の努力だけで量を増やすのは難しい。

※一般的な傾向です。商材・単価・狙う企業・やり方によって大きく変わるため、必ず自社の実績で置き換えてください。

チャネルは「大分類」と「個別のチャネル」の2段で持ち、計画は大分類、改善は個別のチャネルで見ます。細かく分けすぎると、1つあたりの件数が少なくなって転換率が毎月ぶれ、判断に使えなくなります。反対に、まとめすぎると効いているチャネルと効いていないチャネルの差が見えません。

段分け方使いどころ
大分類インバウンド/アウトバウンド/イベント/パートナー・紹介予算の配分と、年・半期の計画
個別のチャネルSEO、リスティング広告、比較サイト、ウェビナー、展示会、電話……毎月の改善(どこを伸ばし、どこを止めるか)

個別のチャネルとして分けて見るのは、次の2つを両方満たすものだけにします。満たさないチャネルは、大分類にまとめて見ます。

  1. 商談化率か獲得単価が、ほかのチャネルと明らかに違う。
  2. 判断に使えるだけの件数がある(目安として、四半期で数十件以上のリード)。

受注目標から逆算する6ステップ

ステップ1:目標を「新規で取るべき受注数」に直す

継続課金の商材は、「目標ARR − 今のARR + 解約で減る見込み」を新規で積む必要があります。差額だけで計算すると、解約の分だけ毎年わずかに届かない計画になります。新規で積む額を平均年間契約額(ACV)で割ると、必要な受注数が出ます。売り切り型の商材は、今の売上と解約を0として同じように計算します。

項目計算記入例
目標ARR期末に達成したい年間の継続売上2億4,000万円
今のARR期首の年間の継続売上1億8,000万円
解約で減る見込み期間中に解約で失う額1,200万円
新規で積む額目標 − 今 + 解約7,200万円
平均年間契約額直近の受注の平均120万円
必要な受注数新規で積む額 ÷ 平均年間契約額年60件(月5件)

※記入例は、架空のBtoB SaaSの数字です。

ステップ2:転換率を「リードが入った月」ごとに測る

転換率は、リードが入った月ごとに、その後何件が商談・受注になったかを追って測ります。今月の商談数を今月のリード数で割る方法だと、リードから商談までにかかる時間の分だけ数字がずれます。月ごとに追うと、正しい転換率と、各段階にかかる日数が同時にわかります。

実績がない段階では、仮の値で始めて毎月置き換えます。参考として、ferret One(株式会社ベーシック)がBtoB企業330社に聞いた調査では、広告経由のリードの商談化率は「11〜20%」と答えた企業が31.3%で最も多く、「5〜10%」が20.0%で続きました。チャネルや商材によって大きく変わるため、あくまで仮置きの目安にとどめてください。

CRMがない会社では、最初の1週間で、直近6か月の問い合わせメール・名刺・商談の予定表をスプレッドシートに書き出し、「リード → 商談 → 受注」の件数をチャネルごとに数えます。完璧な数字でなくても、まず1枚の表にすることを優先します。

ステップ3:必要な商談数とリード数を割り戻す

受注数を受注率で割ると必要な商談数が、商談数を各段階の転換率で順に割ると必要なリード数が出ます。ステップ1の例(月5件の受注)で、MQL化率40%、商談化率30%、受注率25%とすると、次のようになります。

段階計算必要な数(月)
受注ステップ1より5件
商談5件 ÷ 受注率25%20件
MQL20件 ÷ 商談化率30%67件
リード67件 ÷ MQL化率40%168件

あわせて、期首に抱えておくべき商談の量(パイプライン)も決めます。必要な商談数は「受注目標 ÷ 受注率」なので、受注率25%なら受注目標の4倍です。進行中の商談がこの量に足りているかを期首に確かめると、期末に慌てずにすみます。

ステップ4:チャネルごとに分けて計算する

全体の平均ではなく、前の章で決めた分け方で、チャネルごとに逆算します。チャネルによって商談化率も受注率も大きく違うため、平均で計算すると、「商談になりにくいチャネルを増やしても目標に届かない」ことに気づけません。

SityCanvasが支援した人事・労務SaaSの企業では、比較サイト経由の商談化率が5〜10%だったのに対し、担当者に電話で営業を受けてよいかを確認してから引き渡したリードでは16%でした。同じ40件の商談をつくるのに、比較サイトだけなら400〜800件のリードが必要ですが、商談化率16%のチャネルなら250件で済みます。

チャネル商談化率商談40件に必要なリード
比較サイト5〜10%400〜800件
電話(営業を受けてよいかを確認して引き渡し)16%250件

※特定の支援条件における実績をもとにした計算です。成果を保証するものではありません。

ステップ5:受注したい月から、時期をさかのぼる

商談から受注、リードから商談にかかる日数を使って、受注したい月から商談とリードの時期を決めます。商談から受注まで約3か月、リードから商談まで約1か月なら、4月に受注したい案件は、1月には商談、12月にはリードになっている必要があります。今月始めた施策の成果が出るのは、数か月先です。

ワンマーケティング社の同じ調査では、取引金額が高いほど関わる人数が増え(300万円未満で平均5.6人、最も高い価格帯で18.3人)、高価格帯では54%が検討に「半年以上」かけていました。単価が高い商材ほど、リードを集め始める時期を前倒しする必要があります。

時期を早めたいときに見るのが、セールスベロシティ(売上が生まれる速さ)です。「商談数 × 受注率 × 平均単価 ÷ 商談にかかる日数」で計算でき、記入例なら20件 × 25% × 120万円 ÷ 90日で、1日あたり約6.7万円です。商談を増やす以外に、受注率・単価・日数のどれを動かしても速さは上がります。

ステップ6:商談・リード1件に払える上限を出す

1社の受注で得られる粗利から、1社の獲得に使える上限(CAC)を決め、そこから商談1件・リード1件に払える上限を出します。粗利が獲得費用の何倍あればよいかは、資金の状況や成長の方針に合わせて自社で決めます。

項目計算記入例
1社から得る粗利年間契約額 × 粗利率80% × 平均継続3年288万円
1社の獲得に使える上限粗利 ÷ 目標の倍率(3倍)96万円
商談1件に払える上限上の額 × 受注率25%24万円
リード1件に払える上限商談の上限 × リード→商談の率12%約2.9万円

この上限には、営業の人件費も含まれます。広告やリード獲得の外注に回せるのは、ここから営業・インサイドセールスの人件費を引いた残りです。外注するかどうかも、1件あたりの費用がこの範囲に収まるかで判断できます。

逆算したら、一番細いところから手を打つ

逆算表ができたら、「実績 ÷ 必要な数」が一番低い段階から手を打ちます。リードが足りないのか、リードはあるのに商談にならないのか、商談はあるのに受注しないのかで、やるべきことはまったく違います。

足りない段階よくある原因打ち手の例
リードチャネルが少ない、狙う企業がずれているチャネルを足す、狙う企業の条件を見直す
MQL狙っていない企業からの流入が多い広告・記事の訴求を絞る、フォームの項目を見直す
商談連絡が遅い、相手の検討段階に合っていない当日中に連絡する、段階に合わせた話をする
受注決裁者に届いていない、比較で負ける決裁者向けの資料、事例や費用対効果を示す

モデルケース:逆算表でボトルネックを見つける

逆算表は、つくった後に「実績」と並べて初めて役に立ちます。ここでは、ステップ1〜3の記入例の会社(月5件の受注が必要なBtoB SaaS)を使い、直近3か月の実績と並べて、どこに手を打つべきかを診断する流れを見ていきます。

現状:リードは足りているのに、受注が届かない

段階必要な数(月)実績(直近3か月の平均)達成率
リード168件190件113%
MQL67件57件85%
商談20件11件55%
受注5件3件60%

リードは目標を超えているのに、商談は必要な数の55%しかありません。受注率は27%(3件 ÷ 11件)で、仮置きした25%を上回っています。つまり、細いのは「MQL → 商談」の段階です。この状態でリードを増やす施策に予算を足しても、受注はほとんど増えません。

診断:チャネルごとに分けると、原因が見える

大分類チャネルリード(月)商談(月)商談化率
インバウンドSEO・オウンドメディア25件4件16%
インバウンドリスティング広告15件2件13%
インバウンド比較サイト120件3件2.5%
イベント自社ウェビナー30件2件6.7%
アウトバウンド(なし)0件0件―
合計190件11件5.8%

リードの6割以上を占める比較サイトの商談化率が2.5%と、ほかのチャネルより大きく下がっていました。リードの数を支えているチャネルが、商談をほとんど生んでいない状態です。また、リードがインバウンドとイベントに偏り、狙う企業にこちらから当たるアウトバウンドがありません。

打ち手:リードの総数は変えずに、配分と初動を変える

  1. 比較サイトのリードには、当日中に電話し、検討段階(情報収集・比較中・導入時期が決まっている)を確認してから、段階に合った話をする。
  2. 比較サイトの予算の一部を、狙う企業に電話で当たり、営業を受けてよいかを確認してから引き渡すアウトバウンドに振り替える。
  3. マーケと営業で、MQLと商談の定義をそろえ、引き渡しの条件を1枚にまとめる。

見込み:商談11件 → 20件、受注3件 → 5件

大分類チャネルリード(月)商談化率(見込み)商談(月)
インバウンドSEO・オウンドメディア25件16%4件
インバウンドリスティング広告15件13%2件
インバウンド比較サイト90件8%7件
イベント自社ウェビナー30件6.7%2件
アウトバウンド電話(営業を受けてよいかを確認して引き渡し)30件16%5件
合計190件10.5%20件

リードの総数は190件のまま、配分と初動を変えるだけで、商談は月20件に届く見込みになります。受注率25%なら受注は月5件となり、目標に届きます。見込みの商談化率は、SityCanvasが支援した人事・労務SaaSの実績(比較サイト経由が5〜10%、電話で確認して引き渡したリードが16%)をもとに、比較サイトはその中間の8%、電話は16%と置いています。

よくある失敗

  • リード数だけを目標にする:商談にならないリードが増え、営業の負担だけが増える。
  • 全体の平均で逆算する:チャネルごとの差が見えず、効かないチャネルにお金を使い続ける。
  • 解約で減る分を足さない:毎年わずかに目標に届かない計画になる。
  • 今月の数字どうしで割る:時期のずれで転換率がぶれ、施策の良し悪しを見誤る。
  • 営業とマーケで「商談」の定義が違う:同じ数字を見ているつもりで話がかみ合わない。

よくあるのが、リード数は目標の2倍集まったのに、商談は目標の半分にとどまるケースです。原因の多くは、1件あたりの単価が安いチャネルに予算を寄せた結果、狙っていない規模の企業からのリードが増えていることです。チャネルごとに商談化率を見ていれば、早い段階で気づけます。

自社でできるチェックリスト

  • 「リード」「商談」の定義を、営業とマーケでそろえている
  • 継続課金の場合、解約で減る分を目標に足している
  • 転換率を、リードが入った月ごとに追っている
  • チャネルごとに、商談化率と受注率を分けて見ている
  • 期首に、受注目標 ÷ 受注率 の商談を抱えている
  • 受注したい月から逆算して、リードを集め始めている
  • 商談1件・リード1件に払える上限を決めている
  • 達成率が一番低い段階から手を打っている

まとめ

ファネル設計は、受注目標から逆算して、段階ごとの数・転換率・時期・使ってよいお金を決めることです。解約を足し、チャネルごとに分け、リードが入った月ごとに追うと、計画が現実に近づきます。この記事の手順は、記入例つきの「ファネル逆算ワークシート」にまとめています。まずは直近6か月の数字を集め、1枚埋めるところから始めてください。

よくある質問

Q転換率の実績がない場合はどうすればよいですか?
A仮の値で逆算を始め、毎月の実績で置き換えてください。リードが入った月ごとに追えば、1〜2か月で自社の数字が見えてきます。
Q売り切り型の商材でも使えますか?
A使えます。今の売上と解約で減る分を0として、売上目標を平均受注単価で割るところから始めてください。
Qどのくらいの期間の数字で見ればよいですか?
A直近6か月がおすすめです。短すぎると偶然の影響が大きく、長すぎると今の状況と合わなくなります。
Q専用のツールは必要ですか?
A最初はスプレッドシートやワークシートで十分です。チャネル・段階ごとの件数を月ごとに記録できれば、逆算表はつくれます。

参考にした調査・資料

齊藤 秀

この記事を書いた人

齊藤 秀

SityCanvas株式会社 営業支援事業部 責任者

医療・福祉業界向けの人材紹介営業でキャリアを始め、エリア売上1位を継続。WEB・SNSマーケティング会社では、広告・展示会・比較サイトなど複数の経路から来るリードの商談〜クロージングを担当。2023年にSityCanvasの立ち上げに参画し、SaaS企業を中心に営業支援事業と、自社のコンテンツマーケティングを統括。